<パート1>税と登記の接点について

(3) 個人の土地・建物にかかるおもな税

①所得税(国税)
所得税は国税のひとつで、個人の一年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得に対して課される税で、納税者はその所得を税務署に確定申告(2月16日から3月15日まで)し、納税するという制度になっています。
 所得税は、所得の発生態様により10種類に分類されます。①利子所得、②配当所得、④給与所得、⑤退職所得、⑥事業所得、⑦譲渡所得、⑧山林所得、⑨一時所得、⑩雑所得で、本書では、これらの所得のうち、土地・建物にかかるものとして譲渡所得の課税を中心に取り上げます。
 なお、所得税は、所得金額から所得控除額を引いた金額を課税所得金額として、これに税率を乗じた算出税額から税額控除を行ない、納付税額を計算sる、という過程になっております。


② 相続税(国税)
相続税は、被相続人(死亡した人)から相続や遺贈で財産を取得した人に対して課される税で、死亡という原因により偶然に財産を取得したという不労所得に対して課する税です。相続税がかかる場合は、財産を所得した人は、被相続人の住所地の税務署へ、被相続人の死亡の日の翌日から起算して10か月以内に、相続税の申告及び納付をしなければなりません。
 相続税がかかる場合とは、正味の遺産額(債務や葬式費用控除後)が遺産に係る基礎控除額(5,000万円+1,000万円x法定相続人の数)を超える場合です。正味の遺産額が遺産に係る基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
 また、配偶者については、被相続人と共に財産を築きあげた貢献度などを考慮して、税額軽減の措置があります。これを配偶者の税額軽減といいます。


③贈与税(国税)
(1)贈与税のあらまし
贈与税は、個人から贈与で財産を取得した人にかかる税です。贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に、贈与を受けた財産の価額の合計額が、110万円を超える場合にかかります。贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行なうことになっています。
(2)贈与税の非課税財産
贈与で取得した財産でも、非課税とされているものがいくつかありますが、その中で二つあげておきます。
一つは、親子夫婦などの扶養義務者相互間で、教育費や生活費に充てるために贈与が行なわれた財産のうち、通常必要と認められる範囲内のもの、もう一つは、香典、祝物、贈答品などで社交上必要と認められるものです。
(3)贈与税の特例
① 贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者が、その相手方から居住用の不動産、又はこれを取得するための資金を贈与された場合、これらの財産の贈与税の課税価格から、2,000万円までの金額を配偶者控除として差し引くことができます。
② 住宅資金の贈与の特例
個人が住宅を取得するにあたり、その取得資金の一部に充当するため父母や祖父母から金銭の贈与を受けた場合、一定の条件に該当するときは、1,500万円までの部分について贈与税が軽減されます。この場合550万円までは無税です。

④登録免許税(国税)
土地や建物の不動産を取得し、登記をするときにかかる国税です。登記をする人は、不動産の価額や登記の種類に対して、登録免許税法に規定された税率によって算出した金額を、登記申請の際に納付します。
例えば、売買の場合には、
不動産価格x1,000分の50=納付額 となります。
この場合の不動産の価額とは、固定資産課税台帳に登録された価額です。ただし、土地については、平成11年4月1日から平成15年3月31日までの間は、3分の1を乗じて不動産の価額を計算する負担調整措置がとられています。また、登記の種類によっては、一定の要件のもとに、登録免許税の減額措置(パート8の4参照)があります。納付は、原則として現金納付ですが、実際には、登記申請の際に、登録免許税相当額の収入印紙を申請書に貼りつけて納付する、という方法が認められています。

⑤印紙税(国税)
印紙税は、経済取引にともなって作成される文書に対して課される税です。税額は、文書の種類及び文書に記載された契約金額等により定まっております。
納付は、作成した文書に収入印紙を貼りつけて消印することにより行います。
不動産の取引では、おもに不動産売買契約書を作成するとき、売上代金の受取書を発行するとき、家屋を新築する際の工事請負人と締結する工事請負契約者作成のとき、などに納税義務が生じます。

⑥不動産取得税(都道府県税)
土地や家屋を取得した人に対して、土地や家屋の所在する都道府県が課する税です。
(1)納付額
不動産の価額 x 100分の4 =納付額
ただし、住宅の取得に対する税率は100分の3となります。この不動産の価額とは固定資産課税台帳に登録された価額です。なお、平成14年12月31日までの宅地等の取得については、2分の1を乗じて不動産の価額を計算する特例措置が講じられています。
また、住宅や住宅用土地を取得したときは、一定の要件のもとに軽減されます。(パート8の③参照)
(2)納付方法
取得した不動産の所在地を管轄する地方県事務所又は県税事務所から送付される納税通知書により納付します。
(3)申告
不動産取得税の申告は、不動産を取得した日から60日以内に、「不動産取得税申告書」に記入して申告することになっておりますが、この申告をするしないにかかわらず、納税通知書により納付しなければなりません。
ただし、不動産取得税の特例として軽減措置の適用を受けるためには、必ず、「不動産取得税申告書」を取得した不動産所在地を管轄する地方県事務所又は県税事務所へ提出しなければなりません。

⑦固定資産税(市町村税)
毎年1月1日(賦課期日)現在で、土地・家屋などの固定資産を所有している人が、固定資産の価額をもとに算出される税額を、固定資産の所在する市町村に納める税です。
(1)納税義務者
原則として、固定資産の所有者で、毎年1月1日現在で不動産登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録されている人です。
売買の場合、引渡し日をもって、売主・買主の負担割合が生じてきますので、売買契約締結時に、負担関係及び負担額を明確に定めておいた方がよいでしょう。
(2)税額
課税標準額 x 100分の1.4 =税額
課税標準額とは、原則として土地課税台帳や家屋課税台帳に登録された価額です。
(3)納付
市町村から送付される納税通知書により納付します。

⑧住民税(都道府県民税・市町村民税)
住民税とは、地方税の一つで都道府県民税と市町村民税を合わせたものです。所得税との関係でふれますと、所得税の確定申告をした人は、申告の必要がありません。住民税の納付方法は普通徴収といい、市町村から通知される納税通知書により納付することになっており、給与所得から天引きされる特別徴収とは異なります。